副社長3月退任、日立「鉄道ビジネス」立役者の足跡 英国高速鉄道とM&Aで成長、世界大手に比肩
アリステア・ドーマー氏が、3月31日付で日立製作所の副社長を退任した。
ドーマー氏は海外における日立の鉄道ビジネスを飛躍させた立役者だ。1963年8月生まれ。アルストム勤務を経て2003年にイギリスの現地法人、日立ヨーロッパに入社した。日本流の人事制度でいえば傍流の現地採用組にすぎないが、その経営手腕を買われて日立本体の副社長に上り詰めた。
日立入社後のドーマー氏の歩みは、同社の海外鉄道ビジネス躍進の歴史と重なる。ドーマー氏が入社する前の1999年に日立はイギリスでの鉄道事業をスタートした。新幹線に代表される日本の鉄道システムは世界でも認められており、競争力のある価格を提示すれば受注は取れるという自負はあったが、2000年、2002年と2回連続で入札に失敗した。「日本で安全に走ることができたとしても、イギリスの老朽化したインフラの上で同様に走れるかどうかはわからない」というのが、当時の現地鉄道関係者の目に映った日立の印象だった。「絵に描いた餅、ペーパートレインだ」とも揶揄された。
そこへアルストムでの経験が買われ、ドーマー氏が入社した。鉄道部隊の一員としてペーパートレインの汚名返上に挑戦。イギリス製の中古車両に日立製の電機品を搭載し、イギリスの古い鉄道インフラの上を走らせて、安全性を証明した。
納期厳守で信頼勝ち取る
当時、日立が車両の受注を狙っていたのは英仏海峡トンネルのイギリス側出口とロンドンを結ぶ高速鉄道路線「ハイスピード1(HS1)」。ドーマー氏らの地道な努力が実り、2005年に受注に成功した。2007年から高速鉄道車両「クラス395」29編成、174両を笠戸工場(山口県下松市)で製造した。
HS1プロジェクトでは日立が納期よりも早く車両を納入したことが関係者を驚かせた。納期が遅れそうになったら徹夜してでも遅れを取り戻して、決められた納期は必ず守る。日本では当たり前だが、納期の遅れが日常茶飯事のイギリスにおいては、賞賛に値する出来事だった。これが日立への信頼をさらに高めた。
クラス395は2009年に無事運行開始。この年、ドーマー氏は日立レールヨーロッパのマネージングディレクターの任に就いている。
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