日立に勝算、世界で号砲「蓄電池電車」開発競争 フィレンツェで実験成功、欧州勢は実用化進む
2021年1月末の夜10時過ぎ、イタリア中部の古都フィレンツェ。関係者が見守る中、1台のトラム車両が静かに動き出した。車両は通常と同じだが、電車にとっては走行のためのエネルギー源である架線から電力を供給するためのパンタグラフは閉じたままだ。
トラムはそのまま走行を続け、3.5kmの距離を無事に走り切った。日立製作所のグループ会社である、日立レールSpA(イタリア)が開発を進めてきた蓄電池駆動トラムが、その第一歩を踏み出した瞬間だった。
日立はこれまで、環境に配慮したさまざまな鉄道車両の導入に向けて取り組んできており、この蓄電池トラムはその中の1つである。
「蓄電池電車」が秘めた可能性
蓄電池車両は日本でもすでに実績があり、主に非電化区間で運行されるディーゼルカーに代わるものとして、九州(JR九州BEC819系「DENCHA」)やJR東日本の烏山線、男鹿線などで営業運転されている。
こういった地方の非電化路線と異なり、電化されているのが前提のトラムと蓄電池駆動は一見繋がりがないようにも見えるが、蓄電池駆動は未来のトラムに必要不可欠なシステムとなりうる可能性を秘めている。
その理由の1つが導入コストだ。ヨーロッパでは、今も積極的にトラムの新規開業や路線延長が進められている反面、電力供給のための架線の設置や維持管理に多額の費用がかかるため、導入に二の足を踏む都市もある。だが、蓄電池トラムが実用化されれば、起終点や中間駅での充電設備さえ整備すれば、高価な架線設備は不要となる。
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