日立に勝算、世界で号砲「蓄電池電車」開発競争 フィレンツェで実験成功、欧州勢は実用化進む

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また、ブレーキ時に発生する回生電力を使って蓄電池を再充電することができるため、それを加速時に使用することでエネルギー消費の削減にもつながる。もちろん、日本でもすでに新幹線や在来線車両で実装が始まっている停電時の緊急走行用にも役に立つだろうから、既存の路線でも活用できるシステムだ。

今回テストに使用された車両と同型のSirio(写真はミラノ市の車両)。ピニンファリーナがデザインした斬新な外見が特徴だ(筆者撮影)

現在、フィレンツェのトラムで使用される車両は、旧アンサルドブレダ(日立レールの前身)が製造したSirio(イタリア語でシリウスの意)で、今回テストに使用されたのもこの車両を改造したものだ。Sirioそのものは、ミラノやナポリなどイタリアの各都市のほか、ギリシャのアテネやスウェーデンのヨーテボリでも活躍中で、特殊な車両ではない。

そんな中、今回のテストにフィレンツェが選ばれたのは、もちろん日立レールの本社があるピストイアから近い、というのが一番の理由だろうが、それだけが理由ではないようにも感じられる。歴史的な美しい街並みの中を、架線レスの蓄電池トラムが静かに進んでいく……そんな近未来のフィレンツェが脳裏に浮かんではこないだろうか。

欧州では「景観配慮」に大きな期待

ヨーロッパの都市に普及しているトラムだが、架線や架線柱が景観を損ねるとして、特に中世の街並みが今も残る都市では、それを理由に市民から反対されるケースもある。今回のテストに選ばれたフィレンツェも、まさにその問題に直面しており、開業から10年以上が経過した現在も旧市街の最深部への乗り入れを果たせていない。

筆者の友人や知人で、フィレンツェに住む人たちは、今も「町の風景を損ねるような乗り物は要らない」と反対する声を多く聞くそうだ。

我々日本人が想像しているよりはるかに、イタリアをはじめとしたヨーロッパ各国の人々は、自分たちの古くからの街並みを大切に思っている。これから新たにトラムを導入しようかと検討している都市にとって、架線レスの蓄電池トラムという選択肢は、非常に大きな後押しとなるに違いない。

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