日立に勝算、世界で号砲「蓄電池電車」開発競争 フィレンツェで実験成功、欧州勢は実用化進む

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大手メーカー以外も負けてはいない。英国のヴィヴァレイルは、ロンドン地下鉄で廃車となったD型車両をベースにした中古改造車両に蓄電池駆動のオプションが含まれており、スイスのシュタドラーも同社の連接式車両「FLIRT」に蓄電池駆動が可能なタイプを加えている。

英国Vivarailが製造する地下鉄中古車の改造車には、蓄電池駆動のオプションがある(写真:Vivarail)
オーストリア鉄道の100%電力駆動入換機。通常はパンタグラフから集電し、無架線区間でバッテリー走行へ切り替える(筆者撮影)

中国中車(CRRC)のハンガリー向け電気機関車「Bison」には、架線のない構内入換用として、短時間だけ使用可能なバッテリーを搭載する予定だ。

トラムにおいても、蓄電池駆動を取り入れる具体的な話は増えてきており、すでに実用化されたものもある。2007年にトラムを開業したフランスのニースは、路線の一部区間だけ架線がなく、バッテリーで車両を動かしているが、その理由は都市の景観を保つことのみならず、カーニバル行列の邪魔にならないようにという点が含まれているのが面白い。

トルコのコンヤでは市内約3kmの区間を架線レスで建設、シュコダ(チェコ)製の蓄電池駆動トラムを導入し運行を行っている。英国のバーミンガムは、2019年12月に新たに延伸された1.7kmの区間が周囲の景観を考慮して架線レスとなっており、スペインCAF製のトラムに蓄電池を搭載する改造が行われている。

日立「後発」の強みを生かせるか

また、イタリアのボローニャで計画されている新しいトラム路線は、中心部の一部区間を架線レスの蓄電池駆動にすることを決定している。こちらはまだどこのメーカーが受注するかといった、具体的な話は決まっていない。

蓄電池駆動トラムという分野では、すでにアルストムやシュコダ、CAFなど、他社が実用化にこぎつけており、現時点では日立より一歩リードしていると言えるかもしれない。だが、いずれも当時の蓄電池性能や容量の関係から非常に短区間の運用となっており、最新の技術でより航続距離が長い車両を開発できれば、後発の強みが日立にとって有利に働く可能性もある。

今回テストした蓄電池トラムは、現時点ではイタリア側の技術のみで開発されたものだが、すでにJR九州BEC819系電車などで量産型車両を実用化している日本の技術が、今後フィードバックされるのかも気になるところだ。

いわゆる「新世代の本線向け蓄電池駆動車両」という分野においては、すでに実用的な量産型車両を走らせる日本は、欧州メーカーに対して一歩リードしているように見えるが、これをより小型なトラム車両にどう反映させていくのか。蓄電池駆動トラムはまだまだ開発途上の技術と言え、実際に日立も実用化以前の試験段階にあると語っている。しかし昨今の環境問題に対する注目の高さから、今後ますます需要が増える可能性は高い。

最初の一歩を踏み出したばかりの日立製蓄電池トラムは、はたして多くの受注を獲得することができるか。今後の動きに目が離せない。

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