従来型ディーゼル車に引導、JR九州の新車両 電池搭載ハイブリッド車がローカル線の顔に
斬新なデザインの車両で知られるJR九州で、「顔」の周りをLEDライトでふちどった奇抜な外観のニューフェイスが走行試験を行っている。次世代のローカル輸送用として開発された「821系」と「YC1系」だ。
どちらも内外装は同社の車両ではおなじみの工業デザイナー、水戸岡鋭冶氏が担当。真っ黒の正面に並ぶLEDライトや、銀色の車体側面に入った青いロゴなどデザインには共通項が多いが、大きな違いは動力。821系は電車、YC1系はディーゼルエンジンとバッテリーを搭載し、ブレーキ時に発生するエネルギーを蓄電して走行に活用する同社初の「ハイブリッド車両」だ。
開発のコンセプトは両車種ともに、同社の中期経営計画のキャッチフレーズにもなっている「やさしくて力持ち」な鉄道車両だ。YC1系は、形式名もこのコンセプトのローマ字表記(Yasashikute Chikaramochi)の頭文字をとった。
10月5日に福岡市内で開いた報道公開で、同社の福永嘉之・鉄道事業本部副本部長は「『やさしい』というのは環境に優しい、お客様に優しい、そして効率がよく経営に優しいということも言える。私どもの今後の標準車両」と、次世代車にかける期待を述べた。
九州の非電化路線を変えるか
インパクトあるデザインに目を奪われがちだが、両車種の重要なポイントは省エネルギー性能の高さだ。821系は最新のパワー半導体であるフルSiCの採用により、旧型の415系電車と比べて電力消費量を約7割削減。従来型ディーゼルカーの置き換えを目的として開発されたハイブリッド車両のYC1系は、国鉄時代に製造されたキハ66形・67形ディーゼルカーと比較して燃料消費量を約2割低減できるという。
どちらもJR九州の今後を担う車種との位置づけだが、特に将来的な車両のあり方を大きく変えていきそうなのはYC1系だ。福永氏は「もう従来型のディーゼルカーを造るつもりはない」と話す。
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