従来型ディーゼル車に引導、JR九州の新車両 電池搭載ハイブリッド車がローカル線の顔に

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福永氏は今後の非電化区間用車両について、液体式の従来型ディーゼルカーは造らず「電気式に変えていく」という。非電化区間の車両も、電車と同様にモーターで走行するタイプの車両に置き換えて標準化を進め、メンテナンスや運用コストの削減を図る狙いだ。

この流れはすでに始まっている。筑豊本線の一部で、非電化区間である若松―折尾間では、2016年10月から蓄電池電車の「DENCHA(デンチャ)」BEC819系が走っている。電化区間では架線から電気を取り入れて走り、架線のない非電化区間ではバッテリーに蓄電した電力を使用する車両だ。2017年3月には同区間を走るすべての列車が同車両に変わり、従来形のディーゼルカーは撤退した。

福永氏によると、蓄電池電車はバッテリーの容量で走れる距離が決まるので、電化区間と短い非電化区間を直通する列車などに適している。一方、ハイブリッド車は「エンジンを積んでいるのでどこでも走れる」。現在は電車が走っている区間をハイブリッド車で置き換えることも「トータルコストでメリットがあれば、可能性はあるのではないか」という。

また、具体的な計画はないものの、ハイブリッド車のほかにバッテリーを搭載しない電気式ディーゼルカーの導入も考えられるという。

ローカル線維持へ効率化

2018年3月には1日あたり117本の減便を伴うダイヤ改正を実施し、鉄道を取り巻く環境の厳しさが浮き彫りとなったJR九州。地域の生活を支えるローカル列車の運行を続けるためには、コスト削減や効率化は重要な課題だ。

車両の前で報道陣の質問に答える福永嘉之・鉄道事業本部副本部長(記者撮影)

「私どもは鉄道ネットワークを維持していくという大きな使命を持っている。いかに効率よく維持していくかという点で、動力費や修繕費といったコストを下げることは大事だと思っている」と福永氏は語る。新技術を取り入れた省エネ車両が担う課題は大きい。

YC1系は今年度いっぱい、長崎県の佐世保車両センターを拠点として同県内で試験走行を行う予定。営業運転の開始時期や導入路線については未定だが、試験結果を踏まえて検討するという。明るく光るLEDライトが「顔」をふちどる次世代車は、JR九州の将来を明るく照らすことになるだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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