従来型ディーゼル車に引導、JR九州の新車両 電池搭載ハイブリッド車がローカル線の顔に
「水戸岡デザイン」の新型車両に注目が集まるJR九州だが、普通列車やローカル輸送用には旧国鉄から引き継いだ旧型車両もまだ多く残る。同社によると、ローカル列車に使われる電車約800両のうち約2割、ディーゼルカーは約270両のうち65%が製造から30年以上経過している。また、経年40年以上の車両は部品の製造中止によって修繕が難しくなり、故障も多いという。
821系とYC1系は、これらの老朽車両を置き換える目的で開発された。省エネ化による動力費の低減はもちろんだが、特にYC1系は従来のディーゼルカーとシステムが大きく変わったことによるメンテナンスコストの削減も大きな狙いだ。
メンテナンスコストを削減
従来型のディーゼルカーは「液体式」と呼ばれ、車体の床下に積んだエンジンの回転力を「液体変速機」で調整し、推進軸を通じて車軸に伝える。
一方、YC1系はエンジンで発電機を動かし、その電力でモーターを回して走るディーゼルエレクトリック車両(電気式ディーゼルカー)で「電車にエンジンを積んだようなもの」(福永氏)だ。さらに同車両はハイブリッド車のため、ブレーキ時に発生したエネルギーも電気に変えてバッテリーに蓄電しておき、この電力も走行時に活用する。
この方式だと、エンジンとバッテリーを併用することでエネルギーを有効活用できるだけでなく、液体変速機や推進軸といったメンテナンスに手間のかかる部品がなくなる。部品の点数自体は従来型の液体式ディーゼルカーより増えているものの「(変速機や推進軸などの)回転部品が多いとメンテナンスは大変。それがなくなると修繕にかかる費用も低減できる」と福永氏。車両開発担当者も「メンテナンスの手間はディーゼルカーより電車のほうがかからない。この車両はエンジン以外はほぼ電車と同じメンテナンスをすればいいので、整備は楽になる」と語る。
車両保守を担う人材の面でもメリットがある。電車との共通点が多いためだ。「液体式ディーゼルカーは電車とまったく違う車種なので整備の内容も異なるが、このような車両なら電車の担当者に必要な教育を施せば整備できるようになる」(前出の開発担当者)という。
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