日立に勝算、世界で号砲「蓄電池電車」開発競争 フィレンツェで実験成功、欧州勢は実用化進む
蓄電池を動力源とする車両自体は19世紀から実験が行われており、その後実用化されたものもあったので、特段珍しくはない。考え方自体は電池で動く玩具と根本的には同じで、その電池容量を大きくしたものと言えなくもないが、その大容量の電池を製造する技術こそが最も難しい部分であった。
20世紀後半でいえば、ドイツのETA150型バッテリー車両(1954年登場、1995年引退)が最も成功を収めた例と言える。ただ、とりわけ勾配線区では電力消費量が多く使い物にならなかったため、この車両は主に平坦路線で使用された。この時点では、まだ蓄電池車両はディーゼルカーの代わりには成りえない代物で、非電化区間はディーゼルカーの独壇場だった。
しかし、近年は技術革新により蓄電池の性能は大幅に向上、それに合わせて蓄電池駆動の鉄道車両が再び注目を集めている。環境に負荷のかかる鉛電池に代わり、リチウムイオン電池が主流になったことも大きい。もちろん、技術革新によって電池本体の小型軽量化が進んだことも大きいだろう。
欧州各社も開発に注力
再び蓄電池車両が注目を浴び始めた当時は、まだ電池本体のサイズが大きく、客室スペースを犠牲にして搭載する必要があった。だが、今回日立レールがテスト走行したトラムでは、電池は屋根上に搭載され、サイズもほかの機器に干渉することがないほどの大きさになっている。
蓄電池を動力源とする鉄道車両は、ほかの大手鉄道メーカーも開発に力を入れている。ドイツのシーメンスは、同社の近郊型車両「デジーロML」に蓄電池を搭載、オーストリア国内のローカル線で2019年から実際に営業運転に投入されている。ドイツのバーデン=ヴュルテンブルク州に、最新型蓄電池車両「ミレオ plus B」が投入されることも決まった。この車両は蓄電池の電力で、最大120kmの区間を最高時速160km/hで走行できる。
一方、フランスのアルストムは、ドイツのライプツィヒ地方向けに、同社の近郊型車両「コラディア・コンチネンタル」の蓄電池搭載型を納入する契約を交わしている。さらにバッテリー駆動の入換用機関車「Prima H3」をラインナップに加えている。
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