「あの子は空気が読めない」「アスペルガーだから」――。
そんな会話が聞かれるほど、今では身近となった発達障害。発達障害の存在を世の中に浸透させたのが、2002年に初めて行われた文部科学省の調査だ。発達障害の可能性のある子どもが6.3%いるという調査結果が、発達障害の認知度を上げるきっかけとなった。
しかし、教師が児童を点数評価する調査の実施には一部の教員や保護者の強い反発を招いた(詳細は連載第5回「発達障害児『学級に2人』、衝撃結果が広げた大波紋」)。なぜ調査は行われることになったのか。
溝にいる子どもへの支援が求められた
文科省調査の調査研究会メンバーの上野一彦氏(東京学芸大学名誉教授)は、「“障害”と“健常”と呼ばれる子どもの中間に、発達障害の子どもがいる。その溝にいる子どもへの支援を連続的に行うべきだという意見があった」と振り返る。
こうした発達障害の児童を支援の対象にするには、通常の学級にどれくらい発達障害の子どもがいるのか、実態を明らかにする必要があった。その背景には、研究者からの提言や親からの陳情もあった。
上野氏は発達障害の1つである学習障害の第一人者で、アメリカへの留学経験から日本の学習障害児への支援が大幅に遅れていることを訴えていた。
学習障害は当時、「通級指導」(通常学級の児童に個別指導を行うこと)の対象になっていなかった。上野氏の働きかけにより、1990年に学習障害(LD)の子どもを持つ親の会「全国LD親の会」が設立され、学習障害への支援を求める親の会の請願運動が活発化した。
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