2014年、鳥取県庁からある商品についての依頼が筆者の下へ持ち込まれた。地元企業の多くは社内に商品プロデューサーなどいるはずもなく、「いい素材やモノはあってもどう活かしたらよいかわからないという課題を抱えている」という。
鳥取県としても商品のパッケージをリニューアルするなどの支援はしてきたものの、なかなか売り上げが上がらない。そこで生活者のニーズを捉えた商品を考案してほしいと筆者らに白羽の矢が立った。まさに「素材はあるのに、企画のない商品」をリデザインする絶好の機会だった。
対象となったのは、鳥取県で50年続くお餅専門店「いけがみ」の餅だ。
筆者はさっそく鳥取に飛び、餅屋の社長から事情を聞いた。お餅を食べるのは正月ぐらいしかなくなったことや、スーパーで売られる安価な切り餅の台頭、若い人のお餅離れなどの理由から、餅が売れなくなっているというのだ。
自ら利用シーンを限定
そんないけがみも手をこまぬいていたワケではない。起死回生を狙い、1年を通して売れることをもくろんで開発したのが厚さ3ミリメートルの薄いスライス餅だった。パッケージに記された商品名は「しゃぶしゃぶ餅」。「鍋に入れてささっとしゃぶしゃぶして食べれます」。担当者は笑顔で教えてくれた。
「通年用の新商品のはずなのに、鍋というキーワードで使用を限定しているのでは?」。筆者は思ったがそこはご愛嬌。ここにこそ未開拓のチャンスがあるという予感がした。
スライス餅は非常に薄いのでお湯に入れるだけでとろける。鍋以外でもトッピングとして食卓で活用するシーンがすぐに脳裏に浮かんだ。大切なのは「もしも自分だったら」というとっさの生活者的発想だ。すぐに食卓のシーンが思い浮かんだということは、このスライス餅も生活者発想が集められる可能性は高く、Blabo!にとってはもってこいの課題だった。
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