国連の紛争調停官として、コソボ、東ティモール、イラクなどの紛争調停に携わったのが島田久仁彦氏である。数々の紛争地域で威力を発揮した交渉術について島田氏に聞いた。
ゲームチェンジの瞬間を見逃すな!
──国連でのコミュニケーションの苦労は?
最初は割り増ししてものを話す癖があった。そうしないと認めてもらえない。2割増しで話していた感覚だが、周りもわかっていた。お互い人種などが違うので、一生懸命に話の裏を取る。少しずつ「おまえできないじゃないか。そんなわけないだろう」という雰囲気になり、つじつまの合わないことが増えていった。
「いろいろ調べてみたが、僕が正しいんですよ」とまくし立てる。でも相手は僕が一方的に思い込んでいる話を聞きたいわけではない。あるとき、父親や上司からアドバイスをもらった。「一度、人の話を最後まで聞いてみろ」とね。
1回、ひざの上に手を置いて、ギューッと握りしめて我慢してみた。そして、最後まで話を聞いてみたら、「あれ? 思っていた話と全然違うわ」と気づいた。人の命を扱うような仕事をしていたので、書く内容、話す言葉一つで下手したら1つの街が吹っ飛んでしまう。自分はなんて愚かだったのかと後々すごく反省した。
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