組織内の信頼関係を強化するトヨタ式のコミュニケーション術。
トヨタ生産方式を取り入れ、生産性や業績の向上を図ろうとする企業は多い。しかし形だけ取り入れても、なかなか成果にはつながらない。トヨタ自動車には独自のコミュニケーション術が存在するからである。
トヨタが最強といわれる現場をつくってこられたのは、社員に共通の価値観や哲学、すなわち「カイゼン」の精神が根付いているからだ。そして「カイゼン」がうわべだけのものでないのは、社内で徹底した「話し合い」ができているためだ。伝統的に「人づくり」に熱心で、後輩の指導をいとわない風土も関係している。
私は1975年にトヨタに入社し法務部に所属、84年から労働組合(労組)の専従となった。そのおかげで多くの先輩たちや工場部門の話を聞く機会に恵まれ、強さの神髄に触れた。
トヨタの上司と部下の関係を表す場面で印象深いのは、製造現場で何か問題が起こったときだ。担当者が迷わずラインを止めるのだ。もしラインを止めて「何をやっているんだ!」と上司から叱られるのなら、万が一、不良箇所を見つけても怖くて見逃してしまう。
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