生き馬の目を抜く政官の舞台裏で交渉テクニックを磨いてきたのが、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏である。その技巧はビジネスの現場でも大いに参考になるはずだ。
──交渉力で修羅場をくぐり抜けてきたという印象があります。
政治家相手は難しい。政治家の持つ知識にばらつきがあることが問題だった。きまじめに話の誤りを指摘すると、「君、入省何年だ? 局長に君のことをよく話しておくよ」とにらまれる。「元気があっていいじゃないか」というせりふは、「おまえは終わりだ」という意味だ。
政治家が「イラン人はアラブ人だ」と発言したとしよう。「先生、確かにおっしゃるとおりで、イランの中でもごく一部ですが、アラブ系の人がいます。ニョロニョロッとアラビア語のような字を書きますよね……」と話の一部を肯定する。そして、徐々に正しい方向へと上書きしていく。
「ただ先生、あれはペルシア語なんです。アラビア語とはちょっと系統が違いまして、ペルシア語はドイツ語や英語に近い。先生のお話をきちんと伝えるためには、イランに関してはアラブというよりはペルシアというご認識で表現されたほうがより正確になります」という具合だ。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら