「BABYMETAL快進撃!」の絶妙な仕掛け 雛型はPerfume、アミューズ流の戦略とは?

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その命題がBABYMETALの価値にとって大して意味がないことを承知のうえで答えるならば、その形態を客観的に見るかぎり、どう考えてもアイドルです。インタビュー動画を見るかぎり、自己紹介のスタイルやトークの内容はあくまで思春期の少女の特徴を前面に押し出すもので、アイドル的スタイルで貫かれています。

“「アイドルとメタルの融合」をテーマにユニットを結成”と公式に宣言しているのですから、当然と言えば当然なのですが……。

やはり立派に「アイドル」している

全力のあおりとそれに応えるファンの声援や、楽曲に合わせて起きるモッシュは、見ようによってはアイドルライブのコールやオタ芸の変種と見えなくもないですし、なにより、BABYMETALが全力でファンに向き合い、ファンがそれに応えて一つの世界を形成していくあのライブの光景は、確かにメタルなのでしょうが、アイドルライブの一種として見ても何ら違和感がありません。そうしたさまざまな点から、BABYMETALは、やはり立派に「アイドル」しているのです。

しかし、このアイドルとは何か、という問いかけはなかなか深いものです。本コラムでは、アイドルは面白いという導入から、誰もがアイドルであることを疑わないモーニング娘。、AKB48、そしてももいろクローバーZを紹介してきました。ところが、今回、世界では(たぶん)メタルの一変種と見られているだろうBABYMETALを紹介したことで、「アイドル」とは何か、という問いに直面したように思います。

なぜ「アイドル」という「ジャンル」が興隆したのか?

モー娘。AKB48ももクロ、そしてBABYMETALはいずれもアイドルなのでしょうが、その商品としての戦略はそれぞれに大きく異なっています。本コラムの第1回でもご紹介したように、それぞれの戦略からだけでは、なぜ「アイドル」という「ジャンル」が興隆したのかは、単純に説明がつかないようにも思います。

40代以上の方ならば実体験でおわかりだと思いますが、かつてアイドルは別名「アイドル歌手」とも呼ばれていました。ところが、1990年代になって「バラドル」や「チャイドル」といった形で「アイドル」は拡張されていきました。現代はその延長上にあるのですが、本コラムが取り上げたいのは、その中で、再び歌手、あるいは音楽アーティストとしてのアイドルが興隆した社会現象そのものなのです。

個々の固有名詞のアイドルではなく、ジャンル、集合としてのアイドルを考えるためには、その「定義」を考えることが必要です。しかしながら、誰もが漠然と判別できる何が「アイドル」かということに、客観的な視点から明確な定義を与えることはあまりしませんし、なかなかできることでもありません。とはいえ、「アイドル」をテーマに掲げる本コラムとしては、ここから逃げるわけにもいかないように思います。

そこで、そろそろこのコラムでも個々のアイドルの解説から一歩踏み出して、「アイドルとは」何か、という命題に踏み出してみたいと思います。その手始めに、次回は同じテーマを内包した2013年度上半期のNHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」のことを振り返りたいと思います。  

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境 真良 国際大学GLOCOM客員研究員・経済産業省国際戦略情報分析官(情報産業)

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さかい まさよし / Masayoshi Sakai

国際大学GLOCOM客員研究員、経済産業省国際戦略情報分析官(情報産業)
1968年東京都生まれ。学生時代よりゲームデザイナー、ライターとして活動し、1993年に東京大学を卒業、通商産業省に入省。経済産業省メディアコンテンツ課の起ち上げに課長補佐として参画。その後、東京国際映画祭事務局長、早稲田大学大学院客員准教授、(株)ドワンゴ等を経て、現職。専門分野はIT、コンテンツ、アイドル等に関する産業と制度。TwitterID:@sakaima。著書に『テレビ進化論』(講談社、2008年)、『Kindleショック』(ソフトバンククリエイティブ、2010年)『アイドル国富論』(東洋経済新報社、2014年)ほか。モノノフ。

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