本格的な市況の回復は見込みづらい
──コロナでどんな影響が出ていますか。
とくに影響が大きかったのは、マテリアル(化学・繊維)における石油化学、自動車関連、アパレル関連の3つだ。
総じて言えば、5月が大底で、その後、回復の方向には向かっている。汎用石化は指標となるアジア市況が少しずつ持ち直してきた。中国の需要が戻ってきたのが大きい。自動車関連も6月までに完成車メーカーの生産が各地で再開した。最悪期は脱したという認識だ。
ただ、経済活動が元の水準に戻るのは時間がかかる。自動車業界の生産・販売活動は再開したが、主要国の経済自体が厳しい状況にあり、高額な耐久消費財の需要はすぐには戻らないだろう。外出の自粛でアパレルの消費回復にも時間を要する。石化にしても、感染が拡大しているインドの需要が弱く、アジア市況の本格的な回復は見込みづらい状況だ。
──住宅事業でも新規受注が落ち込んでいます。
営業活動を自粛した影響が出ている。展示場も一時的に閉めたので、一番ひどかった5月の受注は前年同月比で66%落ち込んだ(最新の6月の受注は31%減)。戸建て住宅、集合住宅とも非常に厳しかった。建築現場での3密回避で工期のずれ込みも起きている。
──医療機器、医薬などのヘルスケアはどうですか?
マテリアルや住宅と比べれば影響は限られる。アメリカの医療機器子会社が同国政府の要請を受けて人工呼吸器を大幅に増産するなど、プラス材料もある。
ただ、通院患者が減って、薬の需要に影響が出ている。MR(医薬情報担当者)が病院に行けないのも痛手だ。病院の経営が厳しくなっており、高額な機器の購入を先送りする動きも出てくるかもしれない。
地域戦略の再考が必要になる
──旭化成は事業領域が多岐にわたり、いわゆる「コングロマリット経営」ですが、今回のような混乱を経て、その強みと弱点をどう認識していますか。
われわれは、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3事業領域で5つの価値(環境・エネルギー、モビリティ、ライフマテリアル、ホーム&リビング、ヘルスケア)を社会に提供している。
「日本企業も欧米企業のように選択と集中をすべき」といった論調が一時強まった。だが、特定の顧客層に依存する単一事業であるよりも、多くのコア事業とさまざまな販売チャネル、多様な人材を抱えている会社の方が経営の安定性は高い。今回のような危機にも強く、時代の変化にも対応しやすい。
──コロナの収束にはまだ時間を要します。成長戦略は変わりますか。
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