経済・社会活動と感染対策は、つねに綱引き状態だ。国際的な往来の再開は必要だが、どれだけ水際対策をしても感染者は入ってくる。
日本は空港検疫でPCR検査を行っているが、感染者の一定数は潜伏期間や検査の限界のため「偽陰性」としてすり抜けてしまう。では、国内での感染爆発を防ぐためにすべきことは何か。その答えは明確だ。
滞在していた国や地域ごとの感染状況に関する「マクロ評価」と、個人の感染リスクという「ミクロ評価」をできる限り行っていくしかない。
海外の感染状況は外務省が集計しているが、個人についても、例えば入国前と入国後の14日間の行動を把握し、一定の基準を設けて感染リスクが高い人の入国をお断りすることなどが必要になるだろう。入国者については、14日間の自己隔離の徹底や、足跡を追えるよう行動計画を提出してもらうことが重要だ。
政府の進める往来再開の方針に、専門家として不安がないわけではない。最初に緩和されるベトナム、タイ、ニュージーランド、オーストラリアの4カ国の妥当性は正直にいうと微妙だ。
南半球の2国は感染を抑え込めているが、これから冬になる。風邪かコロナかわからない症状の入国者が出るだろう。ベトナムとタイからの渡航者は、症状が軽く済む若い世代が多そうだ。感染者が検疫をすり抜け、日本国内で同郷の仲間などに感染を拡大させる可能性がある。同様の感染はすでに結核で見られる。欧州への渡航も7月に解禁されるが、この1年ほどは、旅行を控えたい。
とはいえ、政府としてはいつまでも“鎖国”はしていられない。来年7月には東京五輪を開催し、世界中から人を迎える予定だ。専門家会議として、政府から開催の可能性についての諮問はまだ受けていないが、個人的な見解を述べれば選手の感染対策はかなり難しい。選手が触れた競技用機具の消毒をどう行うのか、水泳競技を行ううえで、水中での感染リスクは本当にないのか。
論点は多数ある。決めるのは政治。私たち専門家にできるのは、知見に基づいた提案や対外発信を行うことだけだ。(談)
※取材は6月10日に実施






















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