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「感染を抑え込めたのはただ運がよかっただけ」 神戸大学大学院 教授 岩田健太郎

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週刊東洋経済 2020年7/18号
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結果論でしかないが、欧米で感染爆発した国々に比べて日本はうまくいったほうだ。検査態勢や感染防御の資材、専門家集団のシステムなど“地力(じりき)”では足りないものばかりだったが、運よく感染者が少ないときにクラスターを察知し、感染者の総数を抑えられたためギリギリ乗り越えられた。

いわた・けんたろう 1997年島根医科大卒。2008年から神戸大学大学院医学研究科教授(感染治療学)。03年に中国でSARS、14年にはアフリカでエボラウイルス感染症対策に当たる。

新型コロナウイルスは、感染者の8割が軽症だ。一方で、総数が増えればそれだけ重症者も増し、途端に対応が難しくなる。感染者の総数を抑えることができれば対応はそれほど難しくはない。感染者に気がついたのが偶然にも早かったため、2月に患者が増え始めたタイミングでうまく見つけて隔離することができた。

スペインやフランスでは、昨年の12月の段階からすでに新型コロナウイルスは国内に侵入していたことを示唆する研究がある。対応開始に2カ月間のタイムラグがあれば、感染者が増えてしまって、対策は追いつかなくなってしまうのは当然だ。

感染者が極めて少ない時期から対応を始めたからこそ、クラスター追跡が効果的だった。感染者を後ろから追う形式の、この対策ができない規模まで感染者が膨れ上がっていたら、日本もかなり危なかったはずだ。

改善怠れば最悪の事態に

今後は、第2波をいかに起こさないか、起こしたとしてもどれだけ小さいレベルに抑えられるかがカギになる。各国のデータから、感染の規模が大きくなればなるほど対応が難しくなることは明らかだからだ。そのためには感染者の総数を抑え続け、クラスター対策で感染が起きているグループだけに注力するのが効率的だ。

広範囲での緊急事態宣言が長引き、経済的なダメージは大きくなった。今後は最小限の努力で最大限の効果を出さなければいけない。例えば、東京の1400万人のほんの一部で局所的に感染者が発生しているような段階で都全体をロックダウンするのは愚策だ。

米国のように自暴自棄になって経済活動を野放図に再開して感染が再拡大している国は別として、台湾やニュージーランドなど多くの国では感染を抑え込めている。経済活動再開とのバランスは難しいが、油断さえしなければ第2波には対応できるはずだ。ただ、第1波を乗り切れたからといって結果オーライで改善を怠れば最悪のシナリオを招くことになる。

まず改善すべきなのは、感染者が増えたときに全員を医療機関に入院させず、退院もスムーズにさせること。第1波のときのように医療機関の対応能力がなくなると院内感染が起きる。とにかく現場の余裕が大事だ。そのために患者の報告業務なども簡素化すべきだ。最近、ファクスと電話に取って代わったオンラインのシステムは入力項目が多すぎて逆に煩雑だと評判が悪い。

加えて、政策はプロの意見を参考に誰が何を決めているのかをはっきりすべき。政治家の都合で専門家が招集されたり解散させられたりしていたのでは、科学者も政治家や官僚に忖度(そんたく)した発言しかしなくなり、科学的な議論はできなくなってしまう。

(構成 石阪友貴)

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