取材報告を義務付ければ、議長や多数派の政党と異なる考えを持つ議員などはメディアの取材に対して消極的になる恐れがある。なぜなら「委員会の役職を割り当てられない等の報復を受ける」(ベテラン区議)からだ。実際に筆者が最初に企画の取材を申し込んだ議員は「取材は原則禁止とされている」とオファーを断ってきた。こうしたことが積み重なり、議員とメディアの距離が広がるほど、区政の問題を第三者視点でチェックするのは難しくなっていく。
議長への直撃取材で感じた疑問
クリスマスの12月25日、井筒議長は議長室で取材に応じた。杉本豊敬副議長(公明党)も急きょ同席した。主な質疑応答は下記の通り。
新田 NHKの記者と激しくやり合ったと聞いているが?
議長 内容は言いませんが、かなり、やりました。
新田 なぜ、このような通達文を出したのでしょうか。
議長 選挙になって特定の議員だけ取り上げられるのは公平性に欠ける。選挙は近いし、みんな生活がかかっている。区民のために働くためにどうすればいいのか(港区議会全員の)33名が思っている。マスコミからの取材には注意してほしいということです。
新田 議員は個々に有権者で選ばれており、本来は個々で取材を受けるか自己判断、自己責任で応じるべきという意見もある。公平性との意見だが、メディアに取り上げられるかどうかは個々の議員の自由競争ではないでしょうか。
議長 それは新田さんの意見だから、それでいいんじゃないですか。通達を出してから33人の議員は誰もおかしいとは言ってきていない。
新田 私もある議員に取材をお願いしたが、議長への報告を理由に断られた。公式には異論が出ていないが、「やりづらい」「自由に取材を受けるべき」という議員もいた。
議長 (会派の)幹事長会で話をしている。全員共通の意見だ。
副議長 「やりづらい」というのは個人の感覚。議会は会派を組んで物事を決めている。問題があったわけだから(取材を受ければ議長に)聞く方が安心ではないか。
見解が一致しないのはやむを得ないことだが、中でも気になる点が2つほどあったので記したい。
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