ピンタレスト、"未来志向型"SNSの勝算 「なりたい自分」への道しるべ?

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前述の通り、ピンタレストの最大の特徴の一つは、写真だけでなくそれに付随した情報を提供できることにある。法人向けにはたとえば写真の製品情報やレシピなどといった情報を付随できる「リッチピン」というサービスを提供しており、「日本の企業にもこうしたサービスを大いに使ってもらいたい」(シャープ氏)。

消費行動にどうつなげるか

一方、日本での一段の普及には課題も残る。

一つは日本では、他国に比べて「バーバル(言語)コミュニケーション」が盛んなこと。世界的にはノンバーバル系の台頭が目立つが、日本のインターネットユーザーの実感からすると、いまだツイッターなどバーバル系を使っている知人のほうが多いのではないか。いまだピンタレストというと、「写真共有」という認識が強く、デザイナーなどいわゆるクリエーター向けのビジュアル系SNSだと見られがち、ということは否めない。

この点、シャープ氏は「(日本の利用者は)使い方がわからないと使わない、という傾向があるので、ユーザーへの理解を深めるためにローカリゼーションをしっかりやっていきたい」としている。今後は「写真の“向こう側”にある情報を収集できる」という点をアピールして一般ユーザーを開拓していく必要がありそうだ。

二つ目は、「ピンタレストのコアな強み」とシャープ氏が強調する、「発見→共有→行動」というピンタレストユーザーの一連動作のうち、最後の「行動」と「購買」をいかに結びつけられるか。

米国では比較的可処分所得が高く、消費意欲の強い女性のユーザーが多いことからピンタレストは購買行動に一番近いSNSと評されているが、日本ではユーザーベースが依然限られているせいか、検索をしても海外の写真が結果として出てくるケースが目立つので、日本のユーザーがピンタレストを介してショッピングを盛んに行っているとは考えにくい。つまり写真をピンして眺めているだけにとどまっていると見られる。今後、日本のユーザーの消費意欲に火をつけるためには、やはり日本語コンテンツの拡充が欠かせないのではないか。

数多くのSNSが凌ぎを削る中、強みである「発見型」「未来志向」という点をどれだけアピールし、それに対する「答え」をどれだけ用意できるかが、日本でのピンタレスト普及のカギを握るといえる。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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