認知症の人を地域社会から切り離してきた介護施設は、今大きな転換点にある。
銀木犀|子供たちと認知症の人が同じフロアで交流
ヒノキの無垢のフローリング上では、近所の子供たち10人以上が宿題をしたり、ゲームに熱中したりと、それぞれ自由に時間を過ごしている。
千葉県浦安市にある、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の「銀木犀(ぎんもくせい)」で、毎日のように繰り広げられている光景だ。子供たちの目当ては、1階フロアで開店している駄菓子屋で、1カ月で50万円近く売り上げたこともあるという。店番を務めているのは、認知症の入居者たちだ。
子供たちだけではない。1階フロアは地域の人が自由に利用でき、昼時には入居者用の健康的なランチメニューを提供している。母親向けのダンススクールを開いたり、近所の大学生が寺子屋式に子供たちに勉強を教えたりもする。「同じ場所にいると自然と入居者も地域の住民として溶け込んでいく」。銀木犀を運営するシルバーウッド代表の下河原忠道氏は狙いを話す。
現在10棟展開するサ高住の入居率は98%とフル稼働状態が続く。サ高住は有料老人ホームとは異なり入居一時金はかからず、月額料金も厚生年金で賄える。「要介護度や認知症の程度など、さまざまな方が集まって住むことで助け合える自由さが、サ高住の魅力」だと下河原氏は言う。
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