日銀の「資産購入等の基金」は、J-REITの資本調達を活性化させるか?《ムーディーズの業界分析》


事業環境面に関して、ムーディーズは10年9月に日本の不動産業界の見通しをネガティブから安定的に変更した。これは日本経済が緩やかな回復基調にあることと、不動産市況が底を打ちつつあることが主な理由である(「インダストリーアウトルック:日本の不動産業界」2010年9月)。

J-REITセクターの不動産賃貸事業において、投資シェアの大きい東京のオフィスマーケットで空室率に底入れの兆しが強まっている。市場賃料の低下のペースも鈍化しているようだ。海外REITの状況と比較すると、不動産価格の下落率や空室率の上昇と賃料水準の低下が相対的に緩やかな反面、緩やかな景気回復により不動産市況の反転の足取りも緩やかなものとなる可能性がある。J-REITの既存ポートフォリオの賃貸収入は、全体としては今後1~2年の間に緩やかな減収から底打ちに向かう可能性が高いと見ている。

このような環境下で収益の維持・拡大を図るには、資産拡大や資産入れ替えを積極的に進めることが必要となるだろう。ただし、現状のように商業用不動産の取引が低調な環境の中では、優良な投資機会を確保する手腕が発行体の収益力の差につながることも予想される。また、12月5日の『日本経済新聞』報道にあったように、仮に都市再生機構の保有する賃貸住宅の売却が来年中に実現するとすれば、都心の優良不動産への投資機会として注目が集まるだろうが、J-REIT発行体の資金調達の柔軟性が高まるほど、入札での競争力も増すことになるだろう。

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