日銀の「資産購入等の基金」は、J-REITの資本調達を活性化させるか?《ムーディーズの業界分析》

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 09年7月に発表された「不動産市場安定化ファンド」に関して、ムーディーズは投資適格の格付けを維持しているJ-REIT発行体においてポジティブな格付けアクションに直接結びつく可能性は低いとコメントした(「一連のJ-REITs支援策の完了:次には何が起こるのか?」2009年9月セクターコメント)。

これは、発行体が実際にファンドの支援を必要とする蓋然性が低いとの見方が主な理由であった。一方、今回の日銀の施策のケースは、いずれの発行体においても、もし投資口価格の上昇にうまく結びつけば、財務運営や投資活動にポジティブな要因となりうるだろう。このところ上昇基調にある投資口価格ではあるが、投資口価格動向には慎重な見方が必要であり、今後時間をかけてセクターへの影響を注視していく必要があろう。

また、12月7日に金融庁の公表した、「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(中間案)」の中に、投資法人法制にかかる実態および課題等の把握が盛り込まれていることから、プランの具体的進捗にも今後は注目したい。今般の日銀施策の効果も含め、今後不動産市況や資金調達環境の改善が進めば、ポジティブな格付けアクションにつながる要因の1つとなるだろう。

(写真は本文と関係ありません 撮影:尾形文繁)

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