海江田氏の敗北は民主党にとって良いことだ 現状では岡田氏か枝野氏が最適なリーダー

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――TPP交渉へ与える影響をどうみますか。

自民党の勝利の最大の影響はTPPへの日本のアプローチに表れるかもしれません。日本の強力な農業協同組合がTPP交渉の行き詰まりを招いています。安倍首相が勝利して今後4年間の保証を得た今、自民党内の農業族議員との争いにつながる可能性があるとはいえ、選挙での報復を心配せずに農業関係者に立ち向かうことができます。

首相が農業協同組合に対しどれほど強く出るかは、アメリカ連邦議会が早期一括交渉権を得るかどうかにかかっているかもしれません。結局、アメリカが渋っているのに農業上の強い利害関係に立ち向かって、自身の限られた政治的資産を費やすことなど望まないでしょう。

――来たる集団的自衛権の法案をめぐる論戦に対する安倍首相の力は強まったでしょうか、それとも弱まったのでしょうか。

安全保障政策について言えば、批評家たちはよく、安倍首相は議会の3分の2の議席を使ってより独断的な日本の軍事力を実現するべく憲法改正をするつもりだと言います。もちろん、首相は集団的自衛権の行使を認めるよう憲法解釈を広げる法案を追求するでしょうが、今回の選挙結果がどんな形であれ、その法案に対する首相の力を強めることはありません。

公明党のより平和主義的見解や自民党内の消極的勢力を引き続き扱わねばならないだけでなく、今も憲法の再解釈に反対する日本国民が相当数存在します。安倍首相はこのことを認識しており、国内での支持をさらに形成するため根回しするでしょう。それには時間とかなりのエネルギーが必要です。

辺野古移設は再考が必要になる

――沖縄問題に関して政府はアプローチを変えると思いますか。

沖縄の米軍基地問題について、選挙結果が影響を及ぼすことはないでしょう。もちろん人々は、普天間基地移設を支持する自民党候補がだれも小選挙区で勝利しなかった(比例復活当選)のだから、辺野古への移転に反対の意思を表明しているとみるでしょう。

しかし率直に言って、総選挙において沖縄でだれが勝ったかは普天間基地移設問題に関する首相の権威に影響を及ぼすことはありません。むしろ最近の知事選挙の方が影響します。知事選において自民党が敗北したことは、今もかなりの規模の数の人々が米軍基地へ反対していることを安倍首相に思い起こさせました。海外基地を政治的に持続可能なものにすることが米国の政策ですから、知事選挙、衆議院選挙、および辺野古地域の市長選挙で基地反対派の候補者が勝利したことの意味は非常に大きなものがあります。沖縄県民は、何らかの変化が必要であるとの明確なメッセージを日本および米国政府に伝えました。

安倍首相が最も避けたいのは普天間問題が日米同盟のやっかいなトゲになることでしょう。首相は辺野古が普天間基地移設の唯一の候補地だと言いましたが、首相にとっても米国政府にとっても、沖縄住民の反対を無視するのは難しくなっていると思います。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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