また、株式の持ち合いがあるため、業績が低迷しても、株価はそれに対応するほど下落しない。特に旧財閥系企業の場合には、グループ企業の支援があるかぎり、業績が悪化しても倒産することはない。
三菱自動車の救済劇は、その典型と言えよう。同社はリコール隠し事件などの不祥事によって業績が悪化し、2004年3月期から06年3月期まで3期連続して赤字に陥った。これに加え、30年以上資本関係を結んでいた筆頭株主のダイムラー・クライスラーが、04年4月に財政支援の打ち切りを発表した。このため破綻寸前まで追い込まれた。
ところが、05年1月、三菱重工業、三菱商事、東京三菱銀行(当時)の3社が、5000億円の増資支援によって全力で三菱自動車を支えることを決定した。
図に示すように、これによって三菱自動車の株価は急速に回復した。しかし、販売台数は低迷したままだった。同社の株価は、業績ではなくグループ企業の支援に反応したのである。
経営陣は交代したが、グループ内企業からの派遣だった。したがって、広い意味での企業文化は維持されたと考えることができるだろう。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2010年12月25日号 写真:尾形文繁)
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