(第46回)組織は変化に対して自己改革できるか?

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固有文化を持った組織の改革は難しい

ところが、これは決して容易な課題ではなかった。

最大の理由は、保守勢力の存在だ。過去の成功事業を推進した人々はその後に昇進し、経営に強い影響力を持っている場合が多い。ところがビジネスモデルの転換は、単に過去の成功事業からの転換というだけでなく、それらを推進した人々の存在意義をも否定することになりかねない。当該事業の技術専門家の場合には、そうなる可能性が高い。だから、彼らが新しい事業に反対し抵抗勢力になるのは当然のことだ。

それだけではない。過去の成功を可能とした諸要因は、組織内で正統的な地位を確立し、組織構成員の思考方法、行動様式などを強く規定するようになっている。そうした環境では、これまでの事業を否定することは難しい。

IBMの改革者ガースナーは、IBM社員の思考法や行動様式を、「IBMの企業文化」という言葉で表現した。とりわけ重要なのは、会社の外の世界を見ないことだ。

システム360の大成功によって、IBMでは会社の外を見る必要がなくなってしまったのである。外の世界で何が起ころうが、会社の中で進行していることのほうが重要になり、組織構成員の関心はそれにしか向かわない。つまり組織は閉鎖的で内向きになる。このため、会社の外ではまったく通用しない独自の企業文化が成立してしまうのである。

日本企業が閉鎖的で家族的・共同体的性格を強く持っていることは、よく知られている。こうした性格は「日本的」と見なされるが、日本の組織に特有のものというよりは、大組織には多かれ少なかれ共通する傾向である。実際、IBMもAT&Tも、温情的・家父長的・終身雇用的という点で、日本企業の雇用慣行と非常に似た雇用形態をとっていた。

評論家の山本七平は、日本陸軍がこれと同様の閉鎖的組織だったことを述べている。戦場においてさえ、敵との戦闘で勝利することよりも、組織内における自分の位置を固めることのほうが重要と考えられたのである。

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