画期的新薬が使えない、難病患者の知られざる苦悩

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光が当たらない難病患者。医療費負担軽減は見送り

何も治療が行われない場合、5~6年でほとんどの患者が死亡に至るといわれる肺高血圧症では、患者の自己負担は大幅に軽減されている。ところが、「薬剤費が高すぎて十分な治療が受けられない」(肺高血圧症患者会「PAHの会」の村上紀子理事長)、という問題が起きている。

英グラクソ・スミスクラインの肺高血圧症治療薬「フローラン」は、重症患者が最後に頼りにする薬だ。が、薬価は米国の10倍近い高額で、薬剤費だけで1カ月500万円以上に上ることもある。

フローランは1999年に発売されたが、過大な医療費の請求がされていると断定して医療保険の審査支払機関が支払いを認めない、「減額査定」が続出。新薬を十分に使うことができない患者が相次いだ。

その後、患者団体の訴えにより、02年10月に「1日の使用に上限が定められているわけではない」との事務連絡が厚労省から出た。しかし、「減額査定を恐れて今も多くの医師が使用量を抑制している。十分な治療を受けられずに亡くなっていく人は少なくない」、と村上氏は語る。

難治性疾患は5000とも7000ともいわれるが、負担軽減の光は一部分にしか当たっていない。

厚労省の社会保障審議会医療保険部会は10年7月、高額療養費制度の改革に関する議論を開始。一般区分を二つに分割したうえで、所得の低い下半分の階層について自己負担の限度額を引き下げることを柱とした検討を始めた。が、必要財源が2000億円以上に上るとの試算結果に国民健康保険の保険者である地方自治体などから反発が出た途端、財源確保のメドが立たないのを理由に見送りとなった(当面は外来診療での高額療養費の現物給付化を進めることで合意)。

こんなことでいいのだろうか。国民皆保険制度の下で、十分な医療を受けられない人がいることは制度の理念にも反している。患者の実情を踏まえた制度の再構築が必要だ。

(岡田広行 =週刊東洋経済2010年12月25日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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