――これから民主党はどこへ向かうのでしょうか。
民主党は、将来の選挙に備えて反対勢力の中心としての立ち位置を守ることしかできませんでした。しかし今なお民主党は、アンチ自民党としての政党アイデンティティをはっきりと示し、政治を導くことができる存在であると日本の有権者たちに再度信頼してもらう必要があります。与党としての信頼性を証明しようとするあまり、中道もしくは中道右派を突きつめ過ぎると、自民党との差別化に失敗してしまうことになります。代表がいま変わろうとしていて、これから誰が浮上するかが明らかになります。民主党は初心に立ち返り、中道左派でリベラルな改革派政党としてのアイデンティティを取り戻す必要があると、私は考えています。
具体的には、かつては日本の躍進を先導したものの今や成長と世界経済における機能を阻害する要因となっている官僚主義的資本主義制度からの脱却、権力の一極集中から地方分権への促進、反中国の封じ込め戦略ではなくアジアとの関わりにつながる外交政策の模索、日本国粋主義者による歴史改ざんへの反対などを掲げる政党となることです。ここには、維新の会や左派 (日本共産党など) にさえ大いに通じる部分があると考えられます。
――明確な保守派である次世代の党が実質的に一掃されたことには、どのような意味があるのでしょうか。
極右派は、概ね支持を集めませんでした。これは、こういった団体が唱える人種差別的・極右派的レトリックに日本人たちが現状のところ翻弄されていないことを示す良い兆候だといえます。
――その反対に日本共産党は支持を集めました。なぜでしょうか。
日本共産党は、自民党に反対する明確な政綱をもった唯一の野党でした。彼らは消費税増税を(他の政党のように延期を支持しただけではなく) 真っ向から否定し、反原発の姿勢を明確にし、改憲や日本の自衛権拡大に強く反対し、沖縄基地拡大に反対する運動を先導し、そしてクリーンな印象があります。民主党など他の政党には自民党との明確な差異化がみられなかったため、安倍政権への反対票を投じたい多くの人々が日本共産党を選んだのです。
投票率の低さは日本人が愚かではないことを示した
――投票率の低さは何を示しているのでしょうか。
これは日本の人々が愚かではないことを示しています。彼らは、今回の選挙が「ジェリー・サインフェルド的選挙」(アメリカのコメディアンによる長寿テレビ番組にまつわる表現で、何の意味も持たない選挙の意) だということが分かっていたのです。そのため、家から出ないことを選んだのです。
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