「総選挙で日本人は愚かでない選択をした」 極右を排除、低投票率で無意味な選挙に抗議

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――今回の結果は、何かしらの政策的含意を帯びてくるのでしょうか。例えば、TPP交渉や農業改革についてはいかがでしょうか。

知的財産保護など他の政策と同様、TPP賛成派のアメリカや他の国々に倣って日本の農業市場の開放を推し進めたいと安倍首相が望めば、そうすることは可能です。問題となるのは、彼がその必要性を理解するか、もしくはそれに関連した政治的代償を払おうとするかです。安倍首相が追い求めるものにはいずれも代償がついてきます――安全保障法制の整備や、来年出される予定の戦争に関する談話、憲法の改正などもそうです。

それでは、彼は自身のもつ政治的資本を何に使いたいと考えているのでしょうか。私たちには知る由がありません。安倍首相とそのブレーンたちは、オバマ大統領が共和党への協力の証拠としてTPPを通すことに必死になるあまり、最終的に農業市場問題に妥協を示すことをいまだに期待しているのではないかと私は疑っています。そうだとしたら、彼らはアメリカの政治を誤解しています。例えば、共和党は巨大農業地域の意見を代表しているため、日本の農業市場の開放を求めている、といったように。

アメリカが立場を改めずに交渉の場に臨んできた場合、安倍首相はそれに対処する準備ができているのでしょうか。今後数週間でどのような展開を見せるのか、注目しましょう。

――集団的自衛権についてはいかがでしょうか。

安倍首相は、日本国民の支持を得ていない状況下でも、大概のことを望み通りに進められる力を持っています。今回の選挙は、その現実を変えるには至りませんでした。しかし戦略上、安倍首相は公明党と何かしらの交渉を行わなければなりません。この問題に関する公明党の要点は何であるのか、また彼らが戦うにあたってどの程度強い意識を持っているのか、私にはわかりません。

――安倍首相は原子力発電を推進していくのでしょうか。

はい、安全であるとリストに記された発電所を再稼働するつもりだと思います。

沖縄では騒乱が起きる可能性

――沖縄問題についてはいかがでしょうか。

沖縄の人々は、知事選と今回の衆院選の2つの選挙で意思を表明してきました。そして、普天間基地の辺野古移設に対してはっきりと反対の意を示しました。沖縄県知事は、埋め立てを承認したことを覆すための解決策を探ることになります。それに失敗した場合、抗議者の群れがゲート前に押し寄せ、暴動となるでしょう。そのようになれば、東京の官僚やその仲間たちが、アメリカに対する約束を果たすための方策を用意しているかどうかが分かります。

率直に言うと、より大きな基盤構造を脅かしかねない沖縄のそういった騒乱に対し、アメリカがどの程度容認を示すかが分かります。それは、1972年の返還以来、沖縄にとって最も重大な瞬間となるでしょう。

安倍首相とその仲間たちは、現状のまま推し進めるだろうと私は確信しています。なぜなら、アメリカへこの贈り物を捧げることによって、反中国・反韓国政策を推進する裁量がより与えられることになるからです。そして、安倍首相個人としてより重要なのは、それにより日本に対して戦後に下された戦時中の非行に対する判決を逆転させようという歴史改ざん運動も、いっそう進められることになるのです。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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