あえてこの日にラインオフ式を行うことを決めた。今までと同じように過去を振り返るのではなく、未来に向けて新たな一歩を踏み出す再出発の日にしたい──。2月24日、トヨタ自動車の豊田章男社長は愛知県豊田市内の元町工場で燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の量産開始式に臨んだ。
5年前のこの日、章男社長は米国ワシントンで下院公聴会に出席していた。大規模リコールで厳しい批判を浴び、辞任も覚悟しての渡米だった。その前年にリーマンショック後の営業赤字転落という厳しい局面で社長に就任した章男氏は、経営者としての極限状態を経験した。
それ以来、トヨタでは2月24日を「再出発の日」と定め、リコール問題を風化させないための取り組みを行ってきた。トヨタが「水素社会の第一歩を踏み出す車」と位置づけるミライのラインオフをあえてこの日にしたのは、大規模リコールの喪が明けたことを内外に告げる意図があったのかもしれない。
大規模リコールの後も、次々と襲ってくる危機の対策に章男社長は追われ通しだったが、その間も生産現場では営々とカイゼンへの取り組みを続けていた。それは設計や開発、購買、営業といった部門も同様だ。
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