豊田章男社長のトヨタ自動車に対する持ち株比率は0.1%でしかない。一見「オーナー企業」でいて、トヨタ株主としての豊田家の存在は小さい。
一方、今や販売規模でトヨタと並ぶ独フォルクスワーゲン(VW)では、議決権の過半が創業家の手中にある(図表1)。フェルディナント・ポルシェ博士の子孫であるポルシェ家とピエヒ家だ。オーストリア出身のポルシェ博士は1931年に自動車会社「ポルシェ」の前身となる事務所を設立。その後アドルフ・ヒトラー率いるドイツ政府から依頼され、VW「ビートル」の原型となる車を設計した。
国有企業だったVWは60年に民営化されてからも、ポルシェと長らく技術的な協力関係にあった。90年代に倒産の危機に瀕したポルシェは元CEO、ヴェンデリン・ヴィーデキングが立て直す。
業績も順調だった2005年、ポルシェの現監査役会会長ウォルフガング・ポルシェは、単独での生き残りを危惧しVWの経営資源を取り込むべく、ヴィーデキングとともにVWの買収に乗り出す。VWではピエヒ家出身のフェルディナント・ピエヒがすでに監査役会会長を務めていた。ピエヒとウォルフガングは、共にフェルディナント・ポルシェの孫だが不仲だ。
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