採算割れ覚悟で“ミライ”に夢託す企業たち
4月13日。東京タワーのおひざ元に、都心で初めての水素ステーション(ST)がオープンした(上写真)。「さらに力強く水素革命のアクセルを踏み込む」。開所式で安倍晋三首相は力を込めた。
STにはトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」の展示施設も併設。ミライは昨年12月に発売された世界初の市販FCVであり、政府が描く「水素社会」の中核的存在だ。水素は燃焼しても二酸化炭素が発生しないうえ、電気よりも貯蔵性に優れる。新たなエネルギーとして注目が集まる。
呼吸もぴったり 自民とトヨタの蜜月
「水素タンクや水素スタンドなど、燃料電池自動車は規制の山。これを一挙に見直します」。安倍政権が2013年5月に発表した日本再興戦略。民主党によるそれまでの“電気自動車推し”に対し、自民党はFCVへと大きく舵を切った。
政府とトヨタの思惑は一致している。自民党内には小池百合子氏が会長を務める「FCVを中心とした水素社会実現を促進する研究会」が13年に発足。関係省庁やトヨタなどと共に、政策提言に向けた議論が行われている。14年3月には安倍首相自ら、「国策として水素をしっかりと活用していく」と発言。4月に閣議決定したエネルギー基本計画には水素社会の文言が初めて明記された。
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