イノベーションの知恵 野中郁次郎・勝見明著 ~場に即した最高の解を見いだすための事例集

イノベーションの知恵 野中郁次郎・勝見明著 ~場に即した最高の解を見いだすための事例集

評者 津田倫男 フレイムワークマネジメント代表取締役

 本書はイノベーション(変革)の方法論として厳格に読むこともでき、また九つのドキュメンタリーから思いつくままにそのヒントを探るという、ソフトなアプローチも可能だ。

前者の立場を採れば、著者たちが「実践的三段論法」と呼ぶ、目指すべき目的がある、目的を実現するためにはこんな手段がある、ならば実現に向けて行動を起こすべき、という三つの段階を経て、場に即した最高の解を見いだした事例をケースごとに分析すればよい。さらに「モノ的発想」から「コト的発想」への転換、「名詞」ベースではなく、「動詞」ベースの解決法がどのように進められているか、検証することも必要だ。

一方、後者の立場に身を置くと、右記についてはさほど厳密に考えず、誰にとっての目的か、手段の独創性はどこにあるか、行動を引き起こした人間は誰か、などに自由に思いを馳せればよくなる。その過程で、著者たちのいう「身体性の復権」とは何か、偶然を必然化することの意味、賞賛されるべきコトの本質は、などと迫っていけばよい。

いずれの読み方でも多くの教訓が読み取れ、問題解決アプローチが複数あることに気づかされる。コトについて著者たちは、「そこにかかわる人間との関係性のなかで成立する。その関係性は、いま、ここで生まれるもの。したがって毎回毎回、新しい関係性がつくられている」と動的で、緊迫性の高い事象と強調していることを忘れたくない。

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