ハイテク企業が集積し、世界からの知と富と可能性にあふれたはずの街が、新たな格差の象徴になっている。人々の涙と怒り、絶望、そして希望。
シリコンバレーの光と影
「ミッション地区にモンスターはいらない!」 10月4日、土曜日午後。カリフォルニア特有の抜けるような青空と強い日差しの下、サンフランシスコ市南東部のミッション地区でアンチ・イビクション(立ち退き反対)デモが行われた。
参加者はラテン系住民を中心に500人。若者や教職員、移民など、多様な顔ぶれが旗幕や楽器を手にスローガンを叫び、通りを練り歩いていく。
モンスターとは、高級コンドミニアム(マンション)のことだ。同地区はラテン系住民やアーティストなどが多く住む低所得地域だったが、ジェントリフィケーション(高級化計画)の波が押し寄せ家賃が急騰している。高所得のIT(情報技術)関係者やスタートアップ(新興企業)が流入し、不動産投機によって再開発も過熱している。
賃貸専門の不動産オンラインベンチャー、ザンパーが9月に出したリポートで、ついにサンフランシスコの平均月額家賃がニューヨークを抜き全米トップに躍り出た。1ベッドルームがニューヨークでは平均2950ドル(約31万円)であるのに対し、サンフランシスコでは3200ドル(約33万6000円)で、なお上昇している(家賃は10月時点)。
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