富士フイルムが攻めの経営で体質一新、ドル箱失墜からの復活[上]《新「本業」で稼ぐ》

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 08年にスタートした2度目の構造改革は「何もそこまで」という内外の声もあり、経営陣にとっては「そうとう厳しかった」(高橋専務)という。05~06年に手をつけなかった研究開発部門を含め聖域なき改革を断行。「当分、大規模な構造改革をしなくてもいいくらいの強靭な体質」(同)ができ上がった。

液晶パネルで開花した高機能材料フジタック

こうしたリストラだけでなく、成長への布石も打ってきた。大規模研究施設の新設、多数のM&A、生産拠点拡大とこの5年間で2兆円近くの投資を行っている。そして、構造改革を遂行するうえで何よりの武器となったのが、フィルム事業で培った技術の集積だ。独自技術を生かし、デジタル化の波に乗ることができた。

熊本空港から車で30分。26万平方メートルの広大な敷地に、「フジタック」の一大製造拠点、富士フイルム九州(熊本工場)がある。竣工は05年。三つの建屋で、計六つの製造ラインが24時間稼働している。

年間販売台数5億6000万台(10年予測)の液晶テレビ市場。陰の立役者といえるのが富士フイルムだ。ソニー、韓国・サムスン電子、LGエレクトロニクス……。ほぼすべてのメーカーの液晶テレビに、富士フイルムの開発したTACフィルム、フジタックが使われている。09年度の年間出荷量は7億3000万平方メートル。液晶テレビの大画面化につれ、供給量は年率2ケタで増えている。

[下]に続く

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(前野裕香 =週刊東洋経済2010年12月18日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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