ホンダ、異例のリコール対応に踏み込む理由 リコールの全米拡大を受けて日本でも着手

拡大
縮小

米国の制度が安全を第一にしているとはいえ、今回のように調査リコールが全米に拡大するなど、対象が膨らむと交換部品の確保という別の問題も生じてくる。ホンダは調査リコールを全米に拡大したことで、対象が280万台から540万台と倍近くに増加。これを受けて、14年に入ってから届け出のあったリコールに必要とされるタカタの交換部品の数は一気に増え、約900万個に膨らんだ。

タカタの交換部品の生産能力は現在月産35万個。年明けにも45万個へ拡大する計画だが、それでも必要な分が自動車メーカーへ行き渡るのに2年近くかかる計算だ。ホンダでは交換部品の供給元をタカタ以外のメーカーに広げるべく、スウェーデンのオートリブや日本のダイセルと協議をしているが、「二社で交換部品の生産体制が整うのにはおよそ半年がかかる見通し」(広報担当者)という。

全数回収は沖縄から開始

実際、日本で異例の全数回収調査に踏み切ったホンダも、部品の供給体制に懸念を抱いている。そのため、対応は全国一斉ではなく、12月下旬から多湿地域の沖縄県を皮切りに段階的に広げる計画だ。沖縄を最優先するのは、米国で調査リコール実施に至った理由の一つとして、極めて多湿な地域で長い年月使用されてきたエアバッグから不具合が発生しているからだ。

国内ではホンダが先陣を切った格好だが、ほかの自動車メーカーも追随すれば、リコールの対象台数がさらに拡大する。そうすると、生産能力に限りがあるタカタとしては、交換部品をどのような優先順位で供給するのかという難しい課題に直面する。ただし、全数回収調査によって事態が収束するわけでもない。重要なのは、不具合の根本的な原因が一日でも早く明らかにされることである。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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