日本の大手ガス会社の財務安定性は電力会社以上、環境負荷の低いLNGの需要拡大など成長余地も《ムーディーズの業界分析》


ガス事業の安定的な収益構造

安定した規制環境の下で、一般ガス事業の費用と投資の回収の確実性および予見性は高いと考えられる。これが日本のガス会社の高い信用特性を支える主因となっている。

ガス事業者は電力会社に比べて負債比率が低く、キャッシュフロー創出能力も高く、財務数値も良好である。ガス事業会社は、原材料費調整制度により、為替レートの変動を含めた原料費の変動に応じて、ガス料金の従量料金単価が調整されるため、価格転嫁が容易となっている。また、一般ガス事業は実質的に地域独占事業であり、収入基盤は安定している。

大手ガス会社はLNG(液化天然ガス)の卸売にも力を入れている。LNGは環境負荷が低いことから化学、鉄鋼、紙パルプなど工業用需要の分野では石油の代替燃料として使われており、電力に比べてガス事業者は高い成長性が見込まれる。一方、個人向け需要は電力との競合や人口の減少もあって、伸び率は相対的に低い。

シェールズガス動向と今後の見通し

従来、探掘困難であった非在来型ガスは、技術開発により低コストでの採掘が可能になった。特に注目すべきは、非在来型のガスの中で、米国で埋蔵量がいちばん多いといわれているシェールズガス(地下の岩盤層に埋蔵された天然ガス)である。

今後の影響としては、シェールズガスの採掘が活発化することで、将来、天然ガスが大幅な供給過剰になる可能性がある。現在、米国は主に中東、アジア、中米からLNGを輸入しているが、これらの輸出国は新たな仕向け先(アジア、欧州等)を見いださなくてはならなくなる。米国自身が、将来輸出国になる可能性もあり、その場合、仕向け先はアジアになる可能性が高い。これらの仮定が現実のものとなると、アジアでのLNG価格は下落する可能性が高いと思われる。現在、アジアのLNG価格は原油価格に連動しており、足元1バレル=80米ドル前後の原油価格を指標にして決められている。これは北米の天然ガスの販売価格の2~3倍に相当する。

信用上の影響について、電力・ガス会社はLNG価格が下落した場合、その下落相当分を値下げする必要があるため、収益への影響は限定的である。しかし、燃料ソースの多様化により、燃料調達やコスト構造の安定性は上昇する。

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