待ったなし! 「マイナンバー」は普及するか 3大シンクタンクが読む2015年の日本<第5回>

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どんな機能が追加されるか

一方で、「便利なので利用すると思う」と回答した者に絞って、「行政機関から交付される証明書・サービス、および民間事業者が提供するサービスで、追加されると便利だと思う機能は何か」についても調査した。行政サービスに関しては、すでに一緒にする方針のある「健康保険証」が81.4%とトップで、「運転免許証」72.2%、「年金手帳」67.6%、「印鑑登録証」58.4%と続いた。

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(出所)NRI「情報通信サービスに関するアンケート調査」2014年7月

同じく、民間サービスに関しては、「身分証明証」が52.0%、「病院・歯科医院の診察券」40.8%と続いた。これらが、本調査において4割以上の支持を得た、一緒にしたい機能である。

これらに紐付く情報のセキュリティやプライバシーレベルはいずれも高い。一方、ポイント、マイレージ、会員証などのカジュアルなサービスは、追加機能の上位に挙がっていない。ここから指摘できるのは、重要なカードはいっそのこと一緒にしてもよいが、そうでないカードは一緒にして持ち歩きたくないという意識である。

「個人番号カード」の普及を後押しするのは、事業者や生活者のメリットに訴求する施策が有効と考えられるが、こういった民間サービスの便利な機能とは分けたいというのが生活者の本音のようであるため、これによって必要性の理解を深めることは難しそうだ。

しかしながら、会員サービスとしては、頻繁に持ち歩かなくともつねにカードや証書を手元に置いておきたいセキュリティレベルの高いサービス(例:金融サービス)も存在する。たとえば、ID連携トラストフレームワークという考え方が浸透すれば、マイナンバーと同様にセキュリティレベルの高いID同士の連携も考えられる。

つまり、必要性を理解させていくうえでは、カジュアルでよく持ち歩くメインなカードでなくとも、フォーマルで家に置いておくセカンド的なカードと「個人番号カード」の融合は十分考えられる。そこで、マイナンバーのICカード、もしくはIDとこれらのフォーマルな会員サービスとの相性をもう少し研究してみるのも、マイナンバーの真の普及を民間からも後押しするうえで必要かもしれない。

私たちの身の回りを見渡すと、さまざまな会員サービスで満ちあふれており、国民は無意識のうちにそれらを利用している(詳しくは拙著『「ポイント・会員制サービス」入門』をご覧いただきたい)。多くの業種の事業者が会員サービスを提供しており、これらの力をうまく活用する選択肢は、簡単には捨てないほうが得策であろう。いずれはマイナンバーを活用した金融サービスなども出てくると考えられるため、今のうちにこれらの検討を始めるのも、マイナンバーの必要性を理解してもらうには重要である。そして、これらの行きつく先は、新たな官民連携のモデルにもつながるかもしれない。

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安岡 寛道 野村総合研究所 上級コンサルタント Ph.D.

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やすおか ひろみち / Yasuoka Hiromichi

慶應大学大学院修士課程修了。野村総合研究所入社。同社を一旦退社後、スクウェア・エニックスにてeビジネスの新規事業立上げ、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタントにてビジネスコンサルティングに従事。その後、野村総合研究所に再入社。

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