街場のマンガ論 内田 樹著
マンガは日本が世界に誇るサブカルチャーであり、物語性、思想性、主張性など欧米のコミックに比べまるで異質、あるいは高度な文化である。半世紀にわたりマンガにはまり込んできた著者が、漫画家三十余人と五十余の作品を取り上げつつマンガの本質から日本論へと話は展開する。井上雄彦、手塚治虫、山本鈴美香、赤塚不二夫などへの評価、賛辞、敬慕は並大抵ではないが、マンガと宮崎アニメの創造性、奥深さがさまざまに解明される。
マンガの持つ特異性、すなわち表意としての絵と表音としての吹出しを読者が一体的に読み進む能力は、日本語の漢字とカナの関係から生まれていて日本人に固有だという指摘や、竹宮恵子をはじめ1970年代の一連の秀作が反米ナショナリズムと深くかかわっていたとする説など、興味深い分析が随所にある。ポップな文章も楽しめるし、この国ではマンガがすでにサブカルの域を超えつつあるとも感じさせられる。(純)
小学館 1470円
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