大日本印刷が直面する「印刷」の危機、電子書籍に活路はあるか《新「本業」で稼ぐ》
同社のグループ会社には、06年から電子書籍取次事業を行ってきたモバイルブック・ジェーピーがある。さらにNTTドコモと電子書籍事業で業務提携したことで、ドコモが持つ5600万人もの顧客基盤や課金のノウハウを生かし、携帯や読書専用端末などへの配信事業の強化も狙っている。
このように、データを扱うノウハウだけでなく、書店、出版社、取次といった主要プレーヤーを傘下に持っている同社ならではの強みを発揮することで、電子書籍関連で5年後に500億円の売り上げ目標を掲げている。
電子書籍への注目が集まる一方で、出版社や書店は今、収益の大半を依存している紙媒体の売り上げ不振に苦しんでいる。大日本印刷としても、前述の書店や主婦の友社を相次ぎグループに加えたことで、出版社の収益の首を絞めている高い返本率をどう下げるのか、書店の機会ロスをどう削減するかといった、出版流通が抱える難問に取り組まざるをえない。
同社が掲げているハイブリッド書店構想には、適切な在庫管理にオンデマンド印刷や電子書籍販売を導入することにより、返本率を改善し、「読みたい本がない」という機会ロスをなくすという狙いも込められている。さらに、電子書籍事業を展開するに当たっては、日本の出版文化を守る「知の再生産」の重要性を説くなど、出版社に適切な収益が還元されるシステムを構築することが大事だとも強調している。
電子書籍事業が抱える印刷会社としてのジレンマ
しかし、一方の出版社は、電子書籍への流れが進むなか、ビジネスモデルを模索しているのが実情だ。
09年度は大手出版社の多くが減収となり、講談社、小学館などは2期連続の最終赤字となっている。
電子書籍事業は、出版業界活性化の起爆剤となるのか、紙媒体の衰退に拍車をかけるだけなのか--。もし後者であれば、出版印刷と電子書籍の両輪を手掛ける大日本印刷は、大きなジレンマを抱えることにもなりかねない。
いずれにせよ、これらの電子書籍事業はこれからが正念場。
アップルのアイパッドに続き、シャープのガラパゴスなど専用端末が発売され、市場の整備が進む中、総合的なサービスを提供できる強みをどう発揮できるのだろうか。
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(島 大輔 =週刊東洋経済2010年12月11日号)
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