ブラジル経済は10年7.8%、11年4.8%成長を予想、財政緊縮による景気の減速が新政権の課題--ゴールドマン・サックス シニア・エコノミスト/中南米経済担当共同ヘッド アルベルト・ラモス氏
10月31日に行われたブラジル大統領選の決戦投票では、ルラ現大統領の後継者である与党・労働党のルセフ元官房長官が同国初の女性大統領となることが決まった。「ルラ政権の継承」を繰り返し訴えてきたルセフ氏だが、経済政策面では何らかの変化が起こるのか。
また、通貨レアル高圧力をめぐってマンテガ財務相が「通貨戦争」だとして米国の追加量的緩和を非難し、外国からの投資に対する金融取引税を引き上げるなど、不穏な動きも目立っている。
2014年のサッカー・ワールドカップや16年のリオデジャネイロ夏季五輪開催を控えたブラジルへは近年、日本の投資家の間でも証券投資などが増えており、その動向に対する関心は高い。
今後のブラジル経済の行方や課題などについて、米ゴールドマン・サックスのシニア・エコノミストで中南米経済担当共同ヘッドのアルベルト・M・ラモス氏に聞いた。
--大統領選の結果、ルセフ新政権が来年1月に発足するが、経済面で変化はあるか。
マクロの経済政策では大きな変化はないと考えられる。信頼性の高いインフレターゲティング政策は引き継がれ、外国為替の変動フロート制にも変化はないだろう。財政のプライマリー収支を対GDP比で約3%の黒字に保つという政策も含め、マクロ的には前政権の政策が踏襲されることになろう。
新大統領となるルセフ氏が在任4年間での目標として示唆したのは、公的債務の対GDP比率を現状の約40%から30%へ減らすことだ。その主要な狙いの1つは、実質金利の引き下げにある。ブラジルの実質金利は5%前後と、他の国に比べて高い。これでも過去に比べれば最も低い水準にある。2002年には20%以上だった。こうした実質金利の正常化プロセスをさらに推進する意向だ。