ブラジル経済は10年7.8%、11年4.8%成長を予想、財政緊縮による景気の減速が新政権の課題--ゴールドマン・サックス シニア・エコノミスト/中南米経済担当共同ヘッド アルベルト・ラモス氏
もっとも、ブラジル経済の先行きはグローバル経済の状況に左右される。しかも、今の世界経済はかつてないほどの不確実性に包まれている。言えるのは、現状の8%成長は持続的なものではないということだ。
通貨レアルはフェアバリューと比べ割高であり、ブラジルの経常収支の赤字は拡大傾向にある。貯蓄率も低すぎる。典型的なアジアの国々と比べると、はるかに低い。今のところ経常赤字を上回る膨大な資本流入があるため、国際収支全体では黒字だが、こうした経常赤字と資本黒字の状況は将来的な経済の脆弱性につながりかねない。
--先進国の金融緩和に伴うブラジルへの資本流入とレアル高圧力に対して、マンテガ財務相は「通貨戦争」だと言っている。
私は「戦争」だとは思わない。
確かに、レアル高圧力は強いし、ブラジルの中央銀行は(レアル売りの為替介入によって)一段と外貨準備高を積み上げている。日米欧のG3の金融緩和によって、ブラジルに大量の資本が流入しているのは事実だ。米国の政策金利が実質ゼロに対して、ブラジルは10.75%。資本が流入するのは無理もない。
しかし、もしブラジルが財政健全化を進めれば、中央銀行の金利引き下げ余地が生まれ、資本流入の勢いも弱まるはずだ。つまり、ブラジルは世界的な通貨戦争の犠牲者ではない。レアル高には、ブラジル自身の政策も関係している。そして、自らその問題を軽減することもできる。
通貨高というのは本来、急激かつ大幅でなければ、国際的な不均衡を調整するために好ましいことだ。先進国は低成長だから通貨安が必要であり、非常に建設的な展望があるブラジルの通貨の価値が高まるのは当然だ。
来年のレアル相場については、1ドル=1.65~1.70レアルで推移すると見ている。ブラジル政府は通貨高抑制のため資本規制を強化(金融取引税=IOF税の引き上げ)しており、その姿勢を考えればレアルの上値は限られる。