超地味な「地理」が高校の必修科目になったなぜ 4月から登場する「地理総合」で学ぶこと

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こうした受験科目最優先主義に対し、今回の改訂では地理、歴史、公民の3科目をバランスよく学ぶことを目指し、地理総合だけでなく、歴史総合、公共が必履修科目となった。選択ではなく、すべて必ず学ぶべし、なのである。

さて、地理の話だ。これまで、あまり日の目が当たってこなかった地理が必履修化されるまでにはいくつかの伏線があった。1つは2004年度、2007年度に大学生、高校生を対象に日本地理学会地理教育専門委員会が行った地理認識調査の結果だ。

2004年度の調査ではアメリカを中心とする多国籍軍がイラクに侵攻間もない時期だったにもかかわらず、大学生の約4割がイラクの位置を答えられなかった。2007年度は「どげんかせんといかん」をキャッチフレーズに東国原英夫宮崎県知事が活躍していたというのに、高校生の約6割、大学生の約3割が宮崎県の位置を間違えていた。東国原知事は「宮崎はここやが!」と書いたTシャツを売り出し、完売も話題になったが、宮崎の位置がわかる人が増えたものかどうか。

地名や国、県の位置を覚えるのが地理の目指すものではないにはせよ、あまりの結果に当時の新聞はこぞってこの話題を取り上げた。地理教育に関わる人のうちにそれ以前からあった危機感が明確になった時期である。

防災と向かい合う必要性が出てきた

そして、その次が東日本大震災だ。

「自然災害についてはマイナスではあるが、長期的には恵みという面もあるという教え方が主流でしたが、東日本大震災の惨状に考え方が大きく変わりました。それぞれの学会が、ではなく、教育界全体として防災ともっと向かい合い、きちんと教えるべきだと転換。科目としてどこがハブになるべきかという議論が始まりました」と日本地理教育学会会長で筑波大学教授の井田仁康氏は話す。

当初は新たに「防災」という教科を作ることも議論されたが、新科目となると教員免許が必要になり、また、小中高のどこの、どの学年でいつ教えるかなどの問題もあった。交通安全、不審者対策、防災教育など安全教育は保健体育を中心に学校全体で取り組むことになっているため、保健体育でという案もあったが、発災時に地形を考えて逃げる方向を判断するのは保健体育での学習だけでは難しい。

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