2020年、日本が破綻する日 危機脱却の再生プラン 小黒一正著 ~世代間の公平のために独立組織を提唱

2020年、日本が破綻する日 危機脱却の再生プラン 小黒一正著 ~世代間の公平のために独立組織を提唱

評者 河野龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト

 日本の財政は先進国中、最悪の水準にある。家計ならとっくに破綻しているが、国には徴税権があるため、さらなる借金が可能となっている。政府はこの限界に挑戦しようとしているかのようで、このままでは2020年代初頭に、公的債務は家計部門の金融資産を超過する。

統計的手法で計算すると、日本の財政破綻確率は先進国の中で突出していることが、本書で客観的に示される。わが国において「財政破綻」という言葉は、もはやセンセーショナルなものではない。しかし、慎重で客観的な分析を行ってきた財政の専門家までもが、遠くない将来の財政破綻に警鐘をならし始めたことは、事態の深刻さを物語っているといえるだろう。

公的債務膨張の背景には、少子高齢化の進展による社会保障予算の膨張がある。財政破綻リスクが高まるだけでなく、年金や医療、介護といった社会保障制度を通じて、現役世代から高齢者に大規模な所得移転が発生していることも問題である。社会保障制度が生み出す世代間格差の拡大が、制度の持続可能性への不信をもたらし、同時に現役世代の支出を抑制し、低成長の原因となる。財政の持続可能性の回復とともに、世代間格差是正を視野に入れた社会保障制度の再生が必要という主張に、評者も全面的に賛成だ。 

本書の改革案の中で最も興味深いのは、世代間公平委員会という政治から独立した組織を作り、問題の将来への先送りに歯止めをかけることである。たとえば、政治が社会保障の受益水準を決定し、委員会はそれを前提に世代間の公平を確保する負担水準やその方法を専門的に打ち出す。政治は有権者に負担を強いることを避け、すべての問題を先送りしてきたが、その限界に近づいていることを認識しなければならない。

おぐろ・かずまさ
一橋大学経済研究所世代間問題研究機構准教授、経済産業研究所コンサルティングフェロー。1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。旧大蔵省入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官などを経る。

日経プレミアシリーズ 914円 263ページ

  

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