「休日仕事してますアピール」が心を貧しくする訳 経済学者も陥った「幸福感蝕むワーキズム」の罠

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予定表には細かく「この時間はこれをやる」と書きます。移動や食事の予定時間もすべて書きます。予定通りに物事が進まないことを想定して、一定の予備時間も事前に予定します。

本書を読んだのは、過去最高に忙しく、予備時間もすべて使い果たしたときでした。結局そのときはバーンアウト(燃え尽き)しました。ひどい精神状態で、性格も悪くなっていた可能性が高いです。性格が悪くなると自分も周りも楽しくありませんし、訴訟リスクが上がるのでダメです。

そんなとき出会った『タイム・スマート』は、そのような私を「タイム・プア」だと表現します。「お前それめちゃくちゃ貧しいよ」と。言葉は偉大です。タイム・プアという言葉によって、私は自分の状態を、成功ではなく失敗と捉えられるようになった。私が多忙なのは、有能だからではなく無能だからです。

「ワーキズム」は悪しきイデオロギー

「一生懸命働いていないのではないか」と他人に思われないよう人は自発的に休日を返上する、という指摘はとくに唸りました。休むと仲間からの信頼が下がるのではといった恐れですね。そういう恐れの心理は私にもある。日曜日にメールが来ても、ついていねいに返信してしまう。

そういうことが私のなかでストレスとして溜まっていた。私もそのようなストレスを他者に与えていたと思います。根性論も精神論も嫌いですが、やっていることはそうした価値観の増幅で、ろくなものではありません。

この本はいろんなことを、ロジカルに説明してくれます。例えば、上司が自分の休暇中に部下にメールを送ると、部下は「自分も休暇中に働かねばならないのか」と思う。上司にそのつもりがなくともです。よって上司は自分の休暇中に部下にメールを送ってはならない。明解ですよね。

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