ENEOS製油所閉鎖に揺れる和歌山・有田の「苦悩」 市内生産の9割消失、「工場閉鎖」が迫る地方危機

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30分ほどの話し合いでは、閉鎖後の雇用維持や新たな産業作りを要求。ENEOS側からは県や有田市、経済産業省などを交えた検討会を設置することを提案された。

だが、会談後、記者たちを前で仁坂知事は「納得できない」と繰り返した。製油所が置かれた苦しい事情はわかっている。仁坂知事は「ほかの製油所を止めて、操業

大田社長は「和歌山はほかの製油所と比べて能力が著しく低い。残念ながら現在も赤字だ」と説明していた。「採算が合わないのに企業に『造り続けなさい』と言うことはできない」(仁坂知事)。

それでも、仕方がないと簡単に引き下がることはできない。背景にあるのは、石油産業に強く依存する地元経済の構造だ。

和歌山製油所の2020年の製造品出荷額は約4700億円だった。県工業統計によると有田市全体では5178億円だ。つまり、和歌山製油所は有田市の製造品出荷額の実に90%超を占めている。

製油所が町の経済のすべて

雇用面から見ても、製油所の存在は際立つ。ENEOSによると、製油所構内で働くENEOSと協力会社社員は計1300人。有田市の人口の5%程度だ。

ただ、周辺の公共インフラに従事する人のほか、従業員とその家族が利用する飲食店、スーパーなどを含めるとその経済波及効果は計り知れない。地元関係者は「特産品のみかん栽培などの産業はあるが、実際は製油所がこの町の経済のすべてだ」と語る。

それだけに危機感は強い。地元の紀州有田商工会議所は2月14日、緊急相談窓口を設置し、関係会社の業態転換や公的支援の受け方についての相談を受け付けた。担当者は「一人親方のような形態で働く人もなかにはいる。十分な情報がなく不安な人もいるだろう」と話す。

和歌山県や有田市といった行政にも「今後のことが不安だ」「なんとかしてくれ」という声が多く寄せられているという。仁坂知事は「最悪の場合、町が廃墟になってしまう。地域側からは注文を出すくらいしかできない」と苦しい胸の内を明かす。

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