ENEOS製油所閉鎖に揺れる和歌山・有田の「苦悩」 市内生産の9割消失、「工場閉鎖」が迫る地方危機

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深刻なのは、若い世代の流出だ。和歌山に限らず、全国の地方では若者が都会へ移り住み、そのまま戻ってこない問題がある。大きな大学のない和歌山では、県外大学への進学率が82.3%と、全国で3番目に高い数字だ(2020年度、学校基本調査)。

和歌山県によると、高校卒業までに自治体が支出する教育経費は一人当たり1800万円。15~29歳の若年世代で年間3000人ほど流出超過になっており、県の試算では毎年500億円もの教育投資効果が県外に出ているという。

製油所の周りには宴会場、民宿、飲食店が並ぶ(記者撮影) 

製油所で働く人のうち、とりわけ中高年が製油所閉鎖後に新たな職に就いたり、県外に移住したりできるか。仁坂知事は「おそらく半分くらいは地元に残って貯金を取り崩したり、農業の手伝いをして年金生活を待つのではないか。移住は簡単なものではない」とみる

ただ、それでは地域経済の所得は増えず、一方で社会保障の負担は増える。地方は貧しくなるばかりだ。

「跡地検討会」に不満の声も

製油所跡地の活用について、ENEOSが提案した検討会も始まった。2月25日にはENEOS幹部や有田市長らが参加する1回目の会合が開かれた。内容についてENEOSは「差し控える」としている。

だが、関係者によると、「3カ月に1度」としていた検討会の頻度に対する不満が噴出。その結果、実務者による協議を3月中にも開くことが決まった。

ENEOS側の緩慢な動きに地元の焦りは募る。「単に太陽光パネルを敷き詰めるだけでは雇用は生まれない」(仁坂知事)と、跡地利用の内容次第では産業活性化につながらない可能性もある。

日本中には同じように使い道を失った工業用地は多数あり、地方の側はこのまま見捨てられるのではといった危機感は強い。そういった声にENEOSをはじめとした企業側がどう向き合うのかも問われている。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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