「自然免疫は生まれたときからある免疫ですが、実はさまざまなウイルス感染やワクチンによって強化され、その状態のことを『訓練免疫』と言います。子どもは小さい頃にたくさんの種類のワクチンを打つので、それによって訓練免疫が得られるのだと考えられます」(宮坂さん)
さらに最近になって子どもは獲得免疫、なかでも司令塔といえるT細胞の量や働きも大人より子どものほうが勝っていることがわかってきた。次に示すのは、イギリスで出た最新のデータだ。
「このグラフは、新型コロナに感染した生徒と教師、しなかった生徒と教師の、コロナ反応性のT細胞の量を比較したものです。当然、新型コロナにかかった子どものT細胞は増えていますが、興味深いのは感染していない子どもでも、感染した大人と同じぐらいT細胞の量が増えているということ。これはコロナに感染していなくても大人レベルの免疫は持っているということを表しています」
これは、子どもが大人より最近、一般的な風邪の原因でもあるコロナウイルスに感染した経験がある、つまり新型コロナと似たものに免疫を持った(交差免疫を持った)ためかもしれないと分析する。
以上のことから、子どもはもともと持っていたり、生まれてから獲得したりした免疫によって、新型コロナワクチンを接種しなくても重症化しにくいことがわかる。
後遺症はどうだろうか。実は大人の新型コロナの後遺症については明らかになっているが、子どものデータは今のところ出ていない。「あくまでも大人の場合ですが、ワクチンを接種すると後遺症が出る割合が半分から3分の1にまで抑えられる。つまり予防効果があります。しかし、子どもたちにどれくらい後遺症が表れるかがわからない今、検討できる材料がありません」と宮坂さんは指摘する。
結局、子どもにメリットはどれだけあるのか
続いて、子どもにワクチン接種をした場合どれくらいメリットがあるか見ていく。
日本小児科学会では、「海外では、5~11歳の小児に対する同ワクチンの発症予防効果が90%以上と報告」としているが、大人のワクチンでも経験しているように、時間の経過による接種効果の変化まではわからない。
それを解決してくれるのが、アメリカのCDC(疾病対策センター)が2022年3月1日に出した報告書だ。ここには、5~11歳、12~15歳、16~17歳の3つのグループの、救急搬送と入院に対する有効率が出ている。宮坂さんによると「緊急搬送=発症」、「入院=重症化」と置き換えてみてもよいという。
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