混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響

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まず、戦争というリスクのピークは数週間以内に来るのではないか。

地政学的リスクによる資産価格の変動は一時的で長続きはしないというのが、市場関係者が一般的な原則として理解していること。テールリスクのようなことが現実にならなければ、戦争が長期化しても、金融市場へのインパクトは逓減し、さらに陳腐化を速めよう。

ロシアへは確かに強い経済制裁がなされている。ロシアの中央銀行とアメリカの金融機関とのドル取引禁止という措置に踏み込んだのは驚きだった。しかし、ロシア経済は韓国と同程度の規模。世界のGDP(国内総生産)に占める比率は約2%にとどまる。

ロシア制裁がリーマンショックのようなシステミックリスク拡散につながるとは考えにくい。もちろん欧州経済、とくにドイツへの影響は大きいだろうが、アメリカ経済への打撃はさほど大きくないと考えられる。

次の最大の関心事はFRB議長がどう動くか

そうなるとマーケットの次の最大の関心事は、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長がどう動くか、だ。3月15~16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後、利上げ回数は徐々に明らかになるだろう。

市場の関心は、FRBの資産圧縮の開始時期、縮小される保有債券の種類と量に移っていく。9兆ドル近くに膨らんだFRBの資産は、夏ぐらいから年末にかけて1兆~1.5兆ドルぐらい減らすとみている。

FRBの基本姿勢は、MBS(住宅ローン担保証券)をまず減らし、国債中心のポートフォリオにすること。短期債は再投資せず自然減で減らせる。しかし、長期債売却は債券市場への影響も強く、市場の混乱を起こさずに資産圧縮を進めることは容易ではない。パウエル議長の真価が問われる。

ウクライナ戦争がエスカレートする中で、アメリカの金融政策は超緩和から引き締めへ歴史的な転換をする。今週は、後世の歴史に残る1ページになりそうだ。

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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