山陽3000系、多種多彩な「阪神・阪急直通」の立役者 一見すると地味だが、実はバリエーション豊富

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そして神戸高速鉄道開通時には4両6編成と3両5編成の39両が出そろった。同社百年史は「3000系はラッシュ時の輸送力増強を重視した車両だったため、外観や車内設備(ロングシートの座席など)が地味で実用的な車両といえる。当社は3両連結でも4両連結でも、特急にも普通にも運用できて汎用性のある3000系を標準型主力車両として増備した」と説明する。

ロングシートが並ぶ3000系の車内(記者撮影)

最初の2編成6両はアルミ合金製だったが、短期間に低コストで大量に導入する必要から、その後は基本的に鋼製車体で新造された。当時の車体はクリームとブルーのツートンカラーだった。1972年に冷房車両が登場。1981年になると、新工法を用いて再びアルミ車体で新造するようになる。増備は1985年まで続き、初期車から20年以上にわたって、合計133両が製造されるロングセラーとなった。

同社の広報担当者は3000系の特徴について「バリエーションの豊かさ」を挙げる。「鋼鉄車・アルミ車といった外見上の区別のほか、ワンマン対応改造や機器更新で増え続けた部品の種類は整備担当も迷わせるほど」という。

基本的に現在の鋼製車の外観は「クリーム色の車体に赤と黒のライン」、アルミ車は「シルバーの車体に赤のライン」で見分けがつく。ただ、アルミ車と鋼製車を組み合わせて連結した例もあり、アルミ車なのに車体色は鋼製車のようなクリーム色(3066号編成)、鋼製車なのにアルミ車に似せた白色(3100号編成の3619号車)といった“レア編成”が存在する。とくに後者は鉄道ファンの間で、“幸せを運ぶホワイトエンジェル”と呼ばれている。

社員にとって「動く教科書」

車内に目を向けると、一般の乗客にとって違いを意識することはほとんどなさそうだが、化粧板の材質や、窓枠のつくりなどが異なる。3000系に乗車した際には、どちらのカテゴリーに属するか観察してみると面白そうだ。

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阪神の大阪梅田と山陽姫路の間には1998年以降、直通特急が走っている。運用を担うのは後輩にあたる5000系(1986年登場)が中心だ。一方、阪急車両の乗り入れはなくなり、山陽車両も現在では阪急神戸三宮駅止まりとなっている。

2016年には最新の6000系も登場した。だが、同社広報担当者は「運転士や車両課員の教育は3000系の仕組みから学ぶことが基本になっており、まず3000系を理解して基礎を固めるという、動く教科書のような存在です」と位置付ける。

3000系は2022年3月時点で4両12編成、3両9編成の計75両。うち、鋼製車は46両、アルミ車は29両あるという。山陽電車ユーザーにとって見慣れた3000系の出番は徐々に減っている。神戸高速鉄道の開業を機に、阪神・阪急への直通運転という同社の大量輸送時代を切り開いた「3000系ファミリー」。乗り比べを楽しむなら、いまのうちかもしれない。

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