味わい深い「ビジネスでは褒められたら恥」の真意 孫子が教える生き残る人やビジネスの心構え

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プロならば褒められたら恥だと思うぐらいでいい、孫子の教えとは(写真:kikuo/PIXTA)
新型コロナのパンデミックやデジタル化、ロシアによるウクライナ侵攻など、今世界は激動の時代を迎えています。こうした激しい変化の中で会社やビジネスパーソンが生き残るにはどういう姿勢で仕事に臨めばいいのでしょうか。東洋思想家でありながらベンチャーキャピタルと組んで2000社余りをコンサルティングしてきた田口佳史氏の著書『新・孫子の兵法 誰もが「起業家」でないと生き抜けない時代のビジネス戦略』より、孫子の教えを現代的に解釈して紹介します。

「絶対」と言えなければ、準備不足

「ダイビングキャッチなんて、褒めないでほしい」。元メジャーリーガーのイチローさんが、かつてそんなことを言ったのを、私は覚えています。

イチローさんいわく、ボールを追うときに目測を誤ったせいで、やむをえず飛びついたのだから、それは恥ずかしいことだ。むしろ、さも簡単そうに凡フライをキャッチしたように見えたとき、それを褒めてほしい。自分の目測が確かだった証拠だから、と。

この話を聞いたとき、まるで孫子のようだ、と私は思いました。

勝を見ること衆人の知る所に過ぎざるは、善の善なる者に非ざるなり。
(『孫子』形篇より。以下引用同じ)

つまり孫子は、多くの人が感動するような劇的な勝ち方などというものは、最善のものではない、と言います。「感動するような劇的な勝ち方」とはつまり、「危うく」勝っているということ。見ているほうは楽しいかもしれませんが、それは「いい勝ち方」、つまり、負けない戦い方とはいえません。

私たちビジネスパーソンも、ファインプレーを誇らず、「当たり前に勝つ」「楽勝する」ことこそを誇りに思うべきです。

勝兵は先ず勝ちて、而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて、而る後に勝を求む。

孫子は「勝ってから戦え」と独特な表現を用いていますが、要するにこれは、当たり前に勝てるぐらいの準備をしろ、ということです。準備万端に整えて、「すでに勝ったも同然」という状況をつくり出してから、戦いに臨むのです。

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